※ このインタビュー記事は1989年9月、アコースティック・ギター同好会「GUITARISTS」の会報のために南澤が取材・執筆したものです(ブログ掲載にあたり、多少改稿しています)。
→ 前編G:今よく聞いてる音楽はなんですか?
M:えーっと…(といいながら30~40本は入りそうな鞄型のカセットラックを持ってくる)マイルス・デイビス、ライル・メイズ、トッド・ラングレン、ランディ・ニューマン、キング・クリムゾン、トム・ウェイツ、ビートルズ、それから…高橋竹山(津軽三味線)。高橋竹山は素晴らしいね。曲名は読めないけど……。
G:今度のアルバムにはビートルズのカバー(「If I Needed Someone/恋をするなら」)が入っているそうですが、弾いていただけますか?
M:(さらさらと弾く)…‥・アルバムでは歌わずにマイケル・マンリングがフレットレス・ベースでメロディを弾いているんだ(といってデモテープをかけてくれる)。
G:「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」みたいですね。
M:そうだね。…途中でベースが4声になるところもあるんだ。
てなわけであっという間に終わってしまったインタビューでしたが、彼は僕のことを覚えていてくれて(前回の来日の時も会っているのです)、嬉しかったです。また、後で聞いた話ですが、夏に発売予定だった次回作(『Taproot』:仮題)は、ライヴでプレイしてもっとこなれてから出したいということで、来年の春に延期になりました。インスト集ということですが、ドラムやサックスの入った曲や、スタインバーガー(エレキ・ギター)をプレイしている曲など、バラエティに富んだ内容になるそうです。いやー、待ち遠しいですね。
また、CSN&Yのデビッド・クロスビーとグラハム・ナッシュは、次のアルバムでマイケルの起用を決めており、デビッド・クロスビーの方にはクロスビーとヘッジスとの共作を含め、ヘッジスのオリジナル曲も収録される予定だそうです。
続いては8月4日~6日に行われた彼のコンサートについて。僕は3日とも見に行きましたが、8月4日の東京・T33でのライヴが、一番良かったような気がします(箱根のライヴは若干ラフだったかな)。相変わらずハデで、特に5日のライヴでは化粧が濃かった…。衣裳もすごかった…。
フィリップ・アーバーグの、(ニュー・エイジ系のピアニストとは思えないほどの)エキサイティングなピアノ・ソロのあと、いよいよマイケルの登場です。オープニングから新曲「Taproot Suite : Naked Stalk~Jealous Tunnel~About Face」のメドレー。続いて日本初公開の歌モノ「Pinball Wizard」【※5】。ライヴを重ねたせいか、前回の来日のときよりも歌がうまくなっているように聞こえました。そして「Ritual Dance」。
新曲が続いた後は、オハコのナンバーが並びます…「Rickover's Dream」「Funky Avocado」「Aerial Boundaries」。「Rickover's~」はだいぶラフというか、ハデなステージングになっていました。「Funky~」はあいかわらずローリング・ストーンズの「Miss You」が挿入されていたし、「Aerial~」ではお線香に火を灯すいつものシーンも見られました。
続いてのナンバーはラジオのヒットチャートで聞いて気に入ったという、ファイン・ヤング・カンニバルスの「She Drives Me Crazy」【※6】、そしてタッピングだけでできている新曲「Rootwitch」。ラストはおなじみ「Silent Anticipations」で、アンコールはハープギタ一による「Double Planet」。フィリップ・アーバーグを呼んで、二人で「Because It's There」、そして「Come Together」の大盛り上がり大会でコンサートは終了。
ところが聴衆は帰らずにアンコールを求めます。1度引っ込んだマイケルでしたが、また出てきてくれました。2度目のアンコールは「Breakfast in the Field」。これで本当にラストです。会場が明るくなっても、マイケルのファンらしき人々はボーッとしてなかなか席を立とうとしませんでした。はじめての人には刺激が強すぎますからねー。
ライヴのメニューは3日とも同じでしたが、2日日は1曲多く、アンコールにAC/DCのカヴァー(本人は“Heavy Acoustic Guitar!”と言ってました)をやってくれました。
【※5】オリジナルはロックバンド「ザ・フー」で、アルバム『トミー』に収録されている。邦題「ピンボールの魔術師」。エルトン・ジョンらもカバーしている。
【※6】白人2人(g、b)に黒人1人(vo)のイギリスのグループ。「She Drives Me Crazy」は彼らのセカンド・アルバム『ザ・ロー&ザ・クックド』に収録。
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